プロのカメラマンが撮影し、完璧にレタッチされた、息をのむほど美しい商品写真。
その一方で、一般のユーザーがスマートフォンで撮影した、少しブレているかもしれない、生活感あふれる「リアルな写真」。
不思議なことに、後者にこそ多くの「いいね」や「保存」が集まり、時には購買の決め手となることさえあります。
この一見、逆説的な現象にこそ、現代のマーケティングの本質、そしてUGC(ユーザー生成コンテンツ)が持つ計り知れないパワーの秘密が隠されています。
この記事は、UGCを単なる「無料の広告素材」としてではなく、「顧客との信頼関係を築き、ブランドの物語を共に創り上げる、最も重要な資産」として捉え直すための、戦略的な視点と具体的な実践方法を解き明かします。
UGCは、なぜ広告より「効く」のか?信頼を勝ち取る「第三者の証明」
企業が自ら「この商品は素晴らしいです」と100回叫ぶよりも、一人の信頼する友人が「これ、本当に良かったよ」とそっと呟く方が、私たちの心を強く動かします。
UGCが持つ圧倒的なパワーの源泉は、この「第三者による、利害関係のない証明」という点に尽きます。
広告特有の「売り込まれている感」が一切なく、自分と同じ、一人の生活者のリアルな声だからこそ、私たちはそこに本物の信頼を寄せ、安心して購買行動の最後のひと押しを委ねることができるのです。
【創出編】「投稿してね」と祈るだけではダメ。UGCが自然発生する「4つの仕掛け」
良質なUGCは、ただ幸運を祈って待っているだけでは生まれません。
ユーザーが思わず「誰かに伝えたくなる」「この体験を投稿せずにはいられない」と感じるような、戦略的な「仕掛け」を、企業側が能動的にデザインする必要があります。
| 仕掛け | 具体的なアクション例 |
|---|---|
| ①思わず撮りたくなる「体験」の設計 | ・店舗の内装に、誰もが写真を撮りたくなるようなフォトジェニックな壁や、ユニークな小物を設置する。 ・商品のパッケージや梱包を、開封の過程そのものが一つの楽しいイベントになるような、サプライズ感のあるデザインにする。 |
| ②投稿する「意味」と「メリット」の提供 | ・「#(ブランド名)のある暮らし」など、覚えやすく、世界観が伝わる独自のハッシュタグを作成し、そのハッシュタグを付けた投稿を公式アカウントで紹介することを約束する。 ・優れた投稿を表彰するフォトコンテストを開催し、受賞者には特別なギフトや体験といった、金銭では得られないインセンティブを提供する。 |
| ③投稿のハードルを下げる「きっかけ」作り | ・「#今日のおうちカフェ」「#週末のご褒美」など、ユーザーが自身の日常の中で気軽に参加できる、よりパーソナルなテーマのハッシュタグを提案し、投稿の心理的なハードルを下げる。 |
| ④インフルエンサーによる「お手本」の提示 | ・ブランドと親和性の高いインフルエンサーに依頼し、企業が期待するUGCの「理想的なお手本」となるような投稿をしてもらうことで、他のユーザーに「こんな風に投稿すればいいんだ」という具体的なイメージを与え、投稿を誘発する。 |
【活用編】ユーザー投稿は「宝の山」。敬意を払って、価値を最大化する作法
Instagram上で発見したユーザーの投稿は、まさに「宝の山」です。
しかし、その活用には細心の注意と、投稿者への深い敬意が求められます。
特に、ユーザーの投稿を無断で自社のアカウントにリポスト(再投稿)する行為は、著作権の侵害にあたるだけでなく、ユーザーとの信頼関係を著しく損なう、絶対にあってはならない行為です。
1.【発見】: エゴサーチ(自社ブランド名や商品名での検索)や、指定したハッシュタグのフィードを定期的にモニタリングし、良質なUGCを常時発見できる体制を整えます。
2.【許諾】: 活用したい素晴らしい投稿を見つけたら、決してその投稿のコメント欄で済ませようとせず、必ずDM(ダイレクトメッセージ)を通じて、投稿者本人に直接、丁寧に許諾を申請します。「〇〇様のこのお写真が本当に素敵で、ぜひ弊社の公式アカウントでご紹介させていただけないでしょうか?」といった形で、相手への敬意が伝わる言葉を選びましょう。
3.【活用】: 許諾を得ることができたら、投稿に必ずメンション(@ユーザー名)を付けて、誰の投稿であるかを明確に示した上で、リポストやストーリーズでの紹介を行います。これにより、投稿者の貢献を公式に称えることができ、他のユーザーの「自分も紹介されたい」という投稿意欲を健全に刺激することができます。
4.【展開】: 許諾を得たUGCは、Instagram上での活用に留まりません。ECサイトの商品レビューページへの掲載、広告クリエイティブへの活用、パンフレットや店頭POPへの印刷など、様々なマーケティング活動に二次利用することで、その価値をさらに増幅させることが可能です。(※二次利用の範囲についても、最初の許諾申請の際に、事前に包括的な同意を得ておくことが望ましいでしょう)
まとめ:UGCは、顧客が「共犯者」になった証
優れたUGCが数多く生まれている状態。
それは、あなたの顧客が、もはや単なる製品やサービスの「消費者」ではなく、ブランドの価値を共に創り、その物語を自らの言葉で熱く語り広めてくれる、かけがえのない「共犯者=パートナー」へと変化した、何よりの証です。
UGCの活用とは、単なるマーケティング手法の次元を超え、顧客との理想的な関係性を築き、熱狂的なコミュニティを形成するための、現代における最もパワフルな戦略なのです。
株式会社but artは、その熱狂的なコミュニティ形成の設計から実行までを、専門家集団として強力に支援します。
執筆者プロフィール
株式会社but art 代表取締役社長 山口 裕生 愛媛県主催のSNSセミナー講師も務める。
大手企業~中小企業まで100社以上のSNS内製化支援実績を持つ。

