「あの人が紹介していたから、きっと良いものだろう」――。
インフルエンサーの影響力が購買行動を左右する今、多くの企業が彼らに注目しています。
しかし、「インフルエンサーに頼めば売れる」という安易な期待で依頼した結果、生活者からは「また広告か」と見透かされ、誰の心にも響かないまま、多額の費用だけが消えていくケースが後を絶ちません。
この記事は、インフルエンサーマーケティングを単なる「広告枠の購入」から、「信頼できるパートナーとの価値共創」へと捉え直すための、本質的な思考法と実践論を提供します。
失敗の本質は「選び方」にある。インフルエンサー選定の三位一体モデル
多くの企業が、フォロワー数という分かりやすい「量」の指標だけでインフルエンサーを選び、失敗しています。
しかし、本当に重要なのは、以下の3つの要素を統合的に評価し、自社にとって最適なパートナーを見つけ出すことです。
| 評価軸 | 見るべきポイント | なぜ重要か |
|---|---|---|
| リーチ(量) | フォロワー数、インプレッション数 | どれだけ多くの人に情報を届けられるかという、施策の「広がり」を決定する基本的な指標です。 |
| エンゲージメント(質) | いいね、コメント、保存数。特に、コメントの内容が熱狂的か、表面的かを見極めます。 | フォロワーがどれだけそのインフルエンサーの言葉を「自分ごと」として捉えているか、というコミュニティの「熱量」と「深さ」を示します。 |
| ブランド親和性(世界観) | インフルエンサーが持つ雰囲気、価値観、普段の投稿内容が、自社ブランドと一致しているか。 | この一致がなければ、投稿は「やらされている感」のある不自然な広告となり、誰の心も動かすことはできません。真の共感は、世界観の一致から生まれます。 |
【ステマ規制完全対応】「#PR」は、もはや義務であり、武器である
2023年10月から施行されたステルスマーケティング規制(ステマ規制)は、多くの担当者を悩ませています。
しかし、これを「面倒な制約」と捉えるのは間違いです。
むしろ、これは「生活者との信頼関係を再構築し、誠実なブランドであることを証明する絶好の機会」なのです。
・規制の概要: 企業がインフルエンサーに依頼した投稿であるにもかかわらず、その事実を隠して宣伝することは、景品表示法違反となります。違反した場合、企業側が罰則の対象となります。
・なぜチャンスなのか: 「広告」であることを隠さない誠実な姿勢が、逆に生活者からの信頼を獲得する時代になりました。「#PR」は、もはや隠すべきものではなく、ブランドの透明性を示す「勲章」なのです。
・具体的な表示方法: 「#PR」「#広告」「#タイアップ」といったハッシュタグを、投稿の冒頭など、ユーザーが一目で認識できる場所に明瞭に記載する必要があります。インフルエンサー任せにせず、企業側が主導して表示ルールを徹底させることが不可欠です。
依頼前に全てが決まる。「失敗しないための依頼前チェックリスト10」
インフルエンサーとの良好な関係は、最初の依頼の仕方で9割決まります。以下の10項目を、依頼前に必ず確認・合意してください。
- 今回の依頼の目的は明確か?(新商品の認知拡大、ECサイトへの送客など)
- 目的を測るためのKPIは何か?(リーチ数、サイト遷移数、クーポン利用数など)
- インフルエンサーに提供する情報は十分か?(商品の特長だけでなく、開発の背景やブランドの想いなど)
- 投稿内容の自由度はどこまで許容するか?(彼らのクリエイティビティを尊重することが成功の鍵)
- 「#PR」表記のルールは明確に伝えたか?
- 投稿前に、内容を確認させてもらうか?(原則として推奨しませんが、医薬品など誤情報が許されない場合は例外)
- 投稿の二次利用の範囲(自社サイトや広告での利用)は合意が取れているか?
- 報酬(金額、支払いサイト、源泉徴収の有無)は明確に合意したか?
- 効果測定の方法と、レポートの提出形式は決まっているか?
- この施策を通じて、インフルエンサーとどんな関係を築きたいか?(単発か、長期的なパートナーか)
効果測定の教科書|「いいね」の数に、もう惑わされない
施策の成果を「いいねがたくさんついた」で終わらせてはいけません。設定した目的に応じて、適切なKPIで効果を測定し、次の一手へと繋げましょう。
・認知拡大フェーズのKPI: リーチ数、インプレッション数、エンゲージメント率(投稿への反応率)
・興味関心フェーズのKPI: プロフィールアクセス数、ウェブサイトクリック数(UTMパラメータを付与したURLで計測)
・購入・行動フェーズのKPI: 指名検索数(商品名やブランド名での検索がどれだけ増えたか)、クーポンコードの利用数、ECサイトでのコンバージョン数
・定性的な効果: 「どんなコメントがついたか」「ブランドに対してどんな文脈で語られたか」といった、数値では測れない生活者のリアルな反応こそ、次の戦略のヒントになります。
まとめ:インフルエンサーは「パートナー」。共にブランドの未来を創る
インフルエンサーマーケティングの成功の鍵は、インフルエンサーを単なる「広告塔」や「便利な拡声器」として扱うのではなく、ブランドの価値を共に創り上げていく、対等な「パートナー」として尊重することに尽きます。
彼らの持つ世界観とクリエイティビティへの敬意なくして、生活者の心を動かすことはできません。
株式会社but artは、こうした理想的な関係構築から、戦略的なKPI設計、そして効果測定までを一気通貫で伴走し、貴社の事業成長に貢献します。
執筆者プロフィール
株式会社but art 代表取締役社長 山口 裕生 愛媛県主催のSNSセミナー講師も務める。
大手企業~中小企業まで100社以上のSNS内製化支援実績を持つ。

