超高齢社会の日本において、介護職の需要は増す一方であるにもかかわらず、その採用は困難を極めています。
「仕事内容がきつい」「給与が低い」といったネガティブなイメージが先行し、特に若手人材の確保は業界全体の喫緊の課題です。
しかし、この仕事には、それを上回る「大きなやりがい」と「社会貢献性」があります。
本記事は、介護業界の採用担当者様に向けて、SNS、特にYouTubeやTikTok、Instagramを活用し、介護という仕事の真の魅力を伝え、共感を呼ぶことで人材を獲得するための「完全ガイド」です。
明日から実践できる具体的な投稿アイデアから、エビデンスに基づいた成功事例、そして運用のコツまで、介護業界に特化したノウハウを徹底的に解説します。
第1章 介護業界の採用課題とSNS採用の光明
介護業界が直面する採用の壁
1.深刻な人手不足: 需要の拡大に供給が全く追いついていない状況。
2.ネガティブイメージ: 「3K(きつい、汚い、危険)」という旧来のイメージが根強く、仕事の魅力が伝わっていない。
3.専門性の不理解: 高度な知識やスキル、コミュニケーション能力が求められる専門職であることが、正しく認識されていない。
なぜSNSが希望の光となるのか?
SNSは、これらの課題を打ち破る力を持っています。
なぜなら、テキストだけでは伝わらない「現場の温かさ」や「職員の想い」を、動画や写真を通じてリアルに、そして感情的に伝えることができるからです。
利用者様の笑顔、職員同士のチームワーク、そして「ありがとう」という言葉の重み。
これらを可視化することで、ネガティブなイメージを払拭し、仕事の尊さを伝えることができます。
第2章 介護業界に最適なSNSは?YouTube・TikTok・Instagramの使い分け
介護業界の採用では、ストーリー性を伝えられる動画プラットフォームと、職場の雰囲気を伝えられるビジュアル系SNSが有効です。
| 項目 | YouTube | TikTok | |
|---|---|---|---|
| 強み | 長尺動画でドキュメンタリーなど深いストーリーを伝えられる。企業の理念や想いをじっくり語るのに最適。 | ショート動画で仕事の楽しさや意外な一面をテンポよく伝えられる。若年層へのリーチと爆発的な拡散力が魅力。 | 写真と短尺動画(リール)で、職場の日常や清潔感、スタッフの笑顔などをバランスよく発信できる。 |
| 向いているコンテンツ | 職員への密着ドキュメンタリー、社長メッセージ、介護技術の解説動画。 | 「#介護あるある」、流行りのダンス、利用者様との心温まる一コマ。 | 明るい施設内の写真、イベントの様子、スタッフ紹介、リールでの仕事紹介。 |
| 使い分け戦略 | YouTubeで企業理念や仕事の深さを伝えロイヤリティの高いファンを育成し、TikTokで広く認知を獲得、Instagramで日々の魅力を伝え応募への最後のひと押しをする、という連携が理想的。 |
第3章 介護業界で共感を呼ぶ投稿テーマ20選
YouTube向けテーマ
・新人介護士の成長物語: 入社から数ヶ月間の奮闘と成長を追うドキュメンタリー。
・社長が語る「私たちの介護への想い」: 経営者の理念やビジョンを熱く語る。
・一日密着!〇〇さんのお仕事: ベテラン職員の一日の仕事の流れを紹介。
・プロが教える「明日から使える介護技術」: 視聴者にも役立つ専門知識を発信。
・利用者様とご家族からの手紙: 感謝の手紙を読み上げ、仕事のやりがいを伝える。
TikTok向けテーマ
・介護あるある: 介護現場でよくある面白い出来事を寸劇で再現。
・夜勤のルーティン: 流行りの音源に乗せて、夜勤の仕事内容をテンポよく紹介。
・ギャップ萌え動画: 仕事中の真剣な顔と、休憩中の面白い姿を比較。
・利用者様とやってみた: 利用者様と一緒に簡単なダンスや手遊びに挑戦。
・10秒でわかる施設紹介: 施設の様々な場所を高速で紹介。
Instagram向けテーマ
・今日のヒーロー/ヒロイン: その日活躍したスタッフを写真付きで紹介。
・施設のこだわりポイント: 清潔な設備や、こだわりの内装などを美しい写真で紹介。
・手作りレクリエーション: レクリエーションで作成した作品などを紹介。
・スタッフの休日紹介: プライベートの充実ぶりを伝え、ワークライフバランスの良さをアピール。
・Q&Aストーリーズ: 「資格は必要?」「夜勤は月何回?」など、リアルな質問に答える。
第4章 介護業界のSNS採用成功事例3選【エビデンス付き】
1. 元気グループ
- 使用SNS: YouTube
- 施策概要: 介護現場で働くスタッフにフォーカスした1〜3分程度のドキュメンタリー動画を制作・公開。「介護のリアルなやりがい」を感動的に描き出した。
- 具体的な成果: ある動画は140万回以上再生されるなど大きな反響を呼び、採用サイトへの強力な導線となっている。動画を通じて仕事の意義に共感した、質の高い応募者の獲得に成功。
- 引用元: 【2024年】介護職の人材募集|SNSの活用方法と成功事例を紹介
2. ライフホープ(ギャルすぎる介護士)
- 使用SNS: TikTok
- 施策概要: 「ギャル」と「介護士」という意外な組み合わせのキャラクター設定で、「どんな個性も活かせる職場」というメッセージを強烈に発信。残業がないことや社長が優しいことなど、働きやすさもアピール。
- 具体的な成果: 若年層を中心に大きな話題となり、「自分でも働けそう」という親近感を醸成。採用の門戸を広げることに成功している。
- 引用元: 【2024年】介護職の人材募集|SNSの活用方法と成功事例を紹介
3. 日本福祉サービス株式会社
- 使用SNS: YouTube
- 施策概要: 「介護業界の変革Ch」と題し、介護の美しい側面だけでなく、業界が抱える問題点や課題についても社長自らが本音で語る。スタッフのドキュメンタリーなども交え、包み隠さずリアルな姿を見せた。
- 具体的な成果: 強いメッセージ性が共感を呼び、社長の理念に共感した熱意ある人材の採用に成功。企業の透明性や誠実さをアピールし、信頼を獲得している。
- 引用元: 【2024年】介護職の人材募集|SNSの活用方法と成功事例を紹介
まとめ:SNSは、介護の「心」を伝えるための最も強力なツール
介護の仕事の核心は、人と人との心の触れ合いにあります。
その「心」の部分は、どんなに優れた求人広告の文章でも伝えきることはできません。
しかし、SNS、特に動画は、職員の優しい眼差しや、利用者様の穏やかな笑顔、そして現場に流れる温かい空気感を、ありのままに伝えることができます。
SNS採用は、単なる採用手法ではありません。
それは、介護という仕事の尊さ、そしてあなたの施設が持つ独自の魅力を社会に伝え、未来の介護を担う仲間と出会うための、最も人間らしいコミュニケーション活動なのです。
執筆者プロフィール
株式会社but art 代表取締役社長 山口 裕生 愛媛県主催のSNSセミナー講師も務める。
大手企業~中小企業まで100社以上のSNS内製化支援実績を持つ。
