Instagram採用において、投稿がターゲットとする求職者に届かなければ意味がありません。その「届ける」役割を担うのが「ハッシュタグ」です。
しかし、「どんなハッシュタグを付ければいいかわからない」「ハッシュタグを付けても効果が感じられない」と悩む運用担当者は少なくありません。
本記事では、Instagram採用の成果を最大化するための、戦略的なハッシュタグの選び方と使い方を徹底解説します。
ハッシュタグの基本から、具体的な選定ステップ、効果測定の方法、そしてすぐに使えるハッシュタグリストまで、網羅的にご紹介。
この記事を読めば、あなたもハッシュタグを自在に操り、アカウントのリーチを飛躍的に向上させることができるようになります。
Instagram採用におけるハッシュタグの重要性
なぜ、ハッシュタグがそれほどまでに重要なのでしょうか。
その役割と影響を理解することが、戦略的な活用の第一歩です。
ハッシュタグがリーチに与える影響
ハッシュタグは、あなたの投稿を「発見」してもらうための最も強力なツールです。
ユーザーはハッシュタグを検索したり、フォローしたりすることで、自分の興味関心に合った投稿を探します。
つまり、適切なハッシュタグを付けることで、まだあなたのアカウントを知らない潜在的な候補者(未来のフォロワー)に投稿を届けることができるのです。
これを「リーチの拡大」と呼びます。
フォロワー以外にアプローチできる仕組み
Instagramのアルゴリズムは、ユーザーがフォローしているアカウントの投稿だけでなく、興味を持ちそうな投稿を「発見タブ」や「ハッシュタグ検索結果」に表示します。
この時、投稿に付けられたハッシュタグが、投稿のカテゴリをアルゴリズムに伝える重要なシグナルとなります。
適切なハッシュタグは、あなたの投稿を求職活動中のユーザーに届けるための「通行手形」なのです。
ハッシュタグ検索の利用実態データ
ある調査によると、Instagramユーザーの約70%が、商品やサービスを探す際にハッシュタグ検索を利用しているというデータがあります [1]。
これは採用活動においても同様で、多くの求職者が「#26卒」「#エンジニア採用」といったハッシュタグで情報収集を行っています。
この行動を理解し、先回りしてハッシュタグを設計することが重要です。
ハッシュタグの基本知識
効果的な戦略を立てるために、まずはハッシュタグの基本的なルールと種類を学びましょう。
ハッシュタグとは何か
ハッシュタグとは、投稿に関連するキーワードの前に「#」(半角シャープ)を付けたタグのことです。
これを付けることで、投稿がそのキーワードで分類され、同じハッシュタグを持つ他の投稿と一緒に検索結果に表示されるようになります。
Instagramのハッシュタグの仕組み
- タップで検索: 投稿内のハッシュタグをタップすると、同じハッシュタグが付いた投稿の一覧ページに移動できます。
- ハッシュタグのフォロー: ユーザーは特定のハッシュタグをフォローでき、フォローしたハッシュタグが付いた投稿が自分のフィードに表示されるようになります。
ハッシュタグの種類(ビッグ・ミドル・スモール)
ハッシュタグは、その投稿数によって大きく3種類に分類されます。
これらのバランスを意識することが、リーチ拡大の鍵となります。
| 種類 | 投稿数(目安) | 特徴 | 役割 |
|---|---|---|---|
| ビッグハッシュタグ | 10万件以上 | リーチしやすいが、競合が多く埋もれやすい | 多くのユーザーへの認知拡大 |
| ミドルハッシュタグ | 1万~10万件 | 比較的リーチしやすく、競合も多すぎない | 興味関心層へのアプローチ |
| スモールハッシュタグ | 1万件未満 | 検索ボリュームは少ないが、熱量が高く濃い層に届きやすい | ターゲット層への的確なリーチ |
例: #就活 (ビッグ), #26卒 (ミドル), #IT業界志望 (スモール)
最適なハッシュタグ数は12-15個
Instagramでは最大30個までハッシュタグを付けられますが、多ければ多いほど良いというわけではありません。
関連性の低いハッシュタグを乱用すると、かえって投稿の評価を下げる可能性があると言われています。
現在のセオリーでは、投稿との関連性が高いハッシュタグを12〜15個程度に絞って付けるのが最も効果的とされています。
採用アカウントで使うべきハッシュタグ5カテゴリ
採用アカウントで使うべきハッシュタグは、大きく5つのカテゴリに分類できます。
これらのカテゴリを組み合わせることで、網羅的かつ戦略的なハッシュタグ設計が可能になります。
- 企業名・ブランドハッシュタグ: 会社名やサービス名を使った独自のハッシュタグ。(例:
#株式会社Manus,#Manus採用) - 採用関連ハッシュタグ: 採用活動全般に関連するキーワード。(例:
#新卒採用,#中途採用,#採用情報,#就活) - 職種・業界ハッシュタグ: 募集する職種や、自社が属する業界を示すキーワード。(例:
#エンジニア採用,#営業職募集,#IT業界,#メーカー) - 地域ハッシュタグ: 勤務地や事業所の所在地を示すキーワード。(例:
#東京本社,#大阪勤務,#リモートワーク) - トレンド・コミュニティハッシュタグ: 投稿内容に関連する、より具体的なキーワード。(例:
#オフィスツアー,#社員インタビュー,#働きがい)
ターゲット別ハッシュタグ戦略
誰に届けたいかに応じて、ハッシュタグの組み合わせを最適化することが重要です。
新卒採用向けハッシュタグ
就職活動中の学生が検索するキーワードを網羅的に含めます。
・卒業年度: #26卒, #27卒 (ターゲットの卒業年度に合わせて設定)
・就活全般: #就活, #就職活動, #新卒採用, #就活生と繋がりたい
・イベント: #インターンシップ, #会社説明会, #オンライン説明会
中途採用向けハッシュタグ
転職を考えている社会人や、特定のスキルを持つ人材に響くキーワードを選びます。
・転職全般: #中途採用, #転職, #キャリア採用, #転職活動
・志向性: #キャリアアップ, #スキルアップ, #ワークライフバランス
・属性: #第二新卒, #Uターン転職, #Iターン転職
職種別ハッシュタグ
募集職種を明確にすることで、専門性を持つ人材に直接アプローチします。
・エンジニア: #エンジニア採用, #プログラマー募集, #Webエンジニア, #フルスタックエンジニア
・営業: #営業職募集, #法人営業, #インサイドセールス, #カスタマーサクセス
・デザイナー: #デザイナー採用, #UIUXデザイナー, #Webデザイナー募集
ハッシュタグ選定の具体的ステップ
感覚的にハッシュタグを選ぶのではなく、以下の4つのステップで論理的に選定していくことで、効果を最大化できます。
STEP1: 自社に関連するキーワードをリストアップ
まず、前述の5つのカテゴリ(企業、採用、職種・業界、地域、コミュニティ)に沿って、自社のアカウントや投稿に関連するキーワードを思いつく限り洗い出します。
STEP2: 投稿数で競合性を確認する方法
次に、リストアップしたキーワードをInstagramで検索し、それぞれの投稿数を確認します。
これにより、そのハッシュタグがビッグ・ミドル・スモールのどれに分類されるかを把握します。
この作業を通じて、競合が激しすぎる(投稿数が数百万件以上)キーワードや、逆にほとんど使われていない(投稿数が数十件程度)キーワードを除外していきます。
STEP3: ターゲットの検索行動を分析
ペルソナ(ターゲット人材像)になりきって、「自分ならどんなキーワードで検索するか」を想像します。
また、競合アカウントや、ターゲットがフォローしていそうなインフルエンサーがどのようなハッシュタグを使っているかを分析するのも有効です。
STEP4: 効果的な12-15個に絞り込む
最後に、STEP1〜3で集めた情報をもとに、投稿内容との関連性が高く、かつ「ビッグ」「ミドル」「スモール」のバランスが取れた12〜15個のハッシュタグを選び抜きます。
理想的な組み合わせは、ビッグ2-3個、ミドル5-7個、スモール3-5個とされています。
効果的なハッシュタグの選び方
投稿数から見る競合性の判断基準
・ビッグ(10万件以上): 多くの人にリーチできる可能性があるが、すぐに情報が流れてしまう。アカウントのパワーが強い(フォロワーが多い)場合に有効。
・ミドル(1万〜10万件): リーチと競合性のバランスが良い。ここをメインターゲットにするのがおすすめ。
・スモール(1万件未満): 検索する人は少ないが、熱量が高く、投稿を見つけてもらいやすい。ニッチなターゲットに確実に届けたい場合に有効。
競合アカウントのハッシュタグ分析テクニック
ベンチマークしている競合アカウントの投稿で、特にエンゲージメントが高いものをいくつかピックアップします。
それらの投稿で共通して使われているハッシュタグは、効果が高い可能性があります。
ただし、丸パクリするのではなく、自社の投稿内容に合わせて取捨選択することが重要です。
ハッシュタグの組み合わせ方(ビッグ×ミドル×スモール)
例えば、東京本社のIT企業がエンジニアの新卒採用に関する投稿をする場合、以下のような組み合わせが考えられます。
・ビッグ: #就活 #エンジニア
・ミドル: #26卒 #新卒採用 #IT業界 #プログラミング #エンジニア採用
・スモール: #株式会社Manus採用 #東京勤務 #Webエンジニアになりたい #成長できる環境 #オンライン説明会
ハッシュタグの付け方と運用ルール
ハッシュタグを選んだら、次は適切な付け方をマスターしましょう。
ハッシュタグを付ける場所(キャプション vs コメント欄)
ハッシュタグを付ける場所は、投稿のキャプション(本文)の最後か、投稿直後の最初のコメント欄の2択です。
どちらに付けてもアルゴリズム上の効果は変わらないとされています。
・キャプション: 投稿本文と一体化しているため、ユーザーの目に留まりやすい。
・コメント欄: キャプションがスッキリし、本文が読みやすくなる。
どちらを選ぶかは好みですが、キャプションをスッキリ見せたい場合はコメント欄への記載がおすすめです。
投稿ごとにハッシュタグを変えるべきか
毎回同じハッシュタグのセットを使い回すのは避けましょう。
Instagramのコミュニティガイドラインでは、関連性のないコンテンツや反復的なコンテンツを投稿することが推奨されていません。
投稿内容に合わせて、毎回ハッシュタグの組み合わせを最適化することが、リーチを最大化し、アカウントの健全性を保つ上で重要です。
禁止ハッシュタグに注意(シャドウバン対策)
Instagramには、コミュニティガイドラインに違反する不適切な投稿に関連付けられた「禁止ハッシュタグ」が存在します。
これを使用してしまうと、その投稿がハッシュタグ検索結果に表示されなくなる「シャドウバン」と呼ばれる状態に陥る可能性があります。
公序良俗に反する言葉や、差別的な言葉などが対象となります。
使用する前に、そのハッシュタグを検索してみて、検索結果が正常に表示されるかを確認すると安全です。
ハッシュタグテンプレートの作成
毎回ゼロからハッシュタグを選ぶのは大変です。
スプレッドシートなどに、カテゴリ別にハッシュタグの候補をストックしておき、投稿内容に合わせてそこからコピー&ペーストして組み合わせる「ハッシュタグテンプレート」を作成しておくと、運用が大幅に効率化します。
ハッシュタグの効果測定と改善
ハッシュタグ戦略も、投稿内容と同様にPDCAサイクルを回して改善していくことが重要です。
インサイトでハッシュタグ経由のリーチを確認する方法
投稿のインサイトを開き、「リーチ」の項目を見ると、「ハッシュタグからのリーチ」という指標があります。
これにより、その投稿がハッシュタグ検索からどれだけ見られたかを確認できます。この数値が高いほど、ハッシュタグ戦略が成功していると言えます。
効果の高いハッシュタグの見つけ方
どのハッシュタグがリーチに貢献したかを直接知ることはできません。
しかし、ハッシュタグ経由のリーチが多かった投稿で使ったハッシュタグの組み合わせは「当たり」の可能性が高いです。
複数の投稿でテストし、安定して高いリーチを獲得できるハッシュタグの組み合わせを見つけ出しましょう。
A/Bテストでハッシュタグを最適化
似たような内容の投稿で、ハッシュタグのセットだけを変えてみて、どちらがより高いリーチを獲得できるかを比較する「A/Bテスト」も有効です。
例えば、スモールハッシュタグの種類を変えてみる、ミドルハッシュタグの数を増減させてみる、といったテストを繰り返すことで、自社アカウントにとっての最適解を見つけることができます。
月次でハッシュタグを見直すPDCAサイクル
月に一度、その月の投稿でハッシュタグ経由のリーチが高かった投稿と低かった投稿をリストアップし、その要因を分析する時間を設けましょう。
トレンドの移り変わりは速いため、定期的にハッシュタグリストを更新し、戦略を微調整していくことが重要です。
採用アカウント向けハッシュタグリスト50選
すぐに使える採用アカウント向けのハッシュタグをカテゴリ別にまとめました。
ここから自社に合ったものを選び、組み合わせて活用してください。
新卒採用向けハッシュタグ20選
#新卒採用 #26卒 #27卒 #就活 #就職活動 #企業研究 #ES対策 #面接対策 #グループディスカッション #インターンシップ #長期インターン #ベンチャー企業 #大手志望 #就活生と繋がりたい #新卒募集 #会社説明会 #オンライン説明会 #採用 #リクルート #就活グラム
中途採用向けハッシュタグ15選
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職種別ハッシュタグ15選
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ハッシュタグ運用のよくある失敗と対策
最後に、ハッシュタグ運用で陥りがちな失敗とその対策をまとめます。
- 失敗1: 関連性の低いハッシュタグを使う
- 対策: リーチを稼ぎたいからといって、投稿内容と無関係な人気ハッシュタグを付けるのはやめましょう。エンゲージメント率の低下を招き、アルゴリズムからの評価も下がります。
- 失敗2: 同じハッシュタグを使い続ける
- 対策: 毎回同じハッシュタグセットをコピー&ペーストするのはNGです。スパムと判定されるリスクがあります。投稿ごとに最適な組み合わせを考えましょう。
- 失敗3: ハッシュタグを付けすぎる(30個以上)
- 対策: 現在は12〜15個が最適とされています。数を増やすよりも、関連性と質の高いハッシュタグに絞り込みましょう。
- 失敗4: 禁止ハッシュタグを使ってシャドウバンされる
- 対策: 使用前に必ずハッシュタグ検索を行い、正常に表示されるかを確認する習慣をつけましょう。
まとめ:ハッシュタグ戦略の実践チェックリスト
ハッシュタグ戦略を成功させるための最終チェックリストです。投稿前に、これらのポイントを確認しましょう。
- [ ] ハッシュタグの数は12〜15個になっているか?
- [ ] ビッグ・ミドル・スモールのバランスは取れているか?
- [ ] 5つのカテゴリ(企業、採用、職種、地域、コミュニティ)を網羅できているか?
- [ ] ターゲット(新卒/中途/職種)に合わせた選定になっているか?
- [ ] 投稿内容と関連性の高いハッシュタグを選べているか?
- [ ] 禁止ハッシュタグが含まれていないか確認したか?
- [ ] 毎回同じセットの使い回しになっていないか?
戦略的なハッシュタグの活用は、Instagram採用の成否を分ける重要な要素です。
本記事を参考に、データに基づいたPDCAサイクルを回し、自社にとっての「勝てる」ハッシュタグ戦略を構築してください。
参考文献
[1] HubSpot. (2022). The Top Instagram Hashtags for Your Industry.
執筆者プロフィール
株式会社but art 代表取締役社長 山口 裕生 愛媛県主催のSNSセミナー講師も務める。
大手企業~中小企業まで100社以上のSNS内製化支援実績を持つ。
