はじめに
「SNSの内製化に挑戦したものの、フォロワーが全く増えない…」 「担当者が疲弊してしまい、投稿が止まってしまった…」 「時間とコストをかけたのに、売上に全くつながらない…」
SNS運用の内製化は、コスト削減やノウハウ蓄積など、多くのメリットがある一方で、正しい知識と戦略なしに進めてしまうと、貴重なリソースを無駄にしてしまう危険な落とし穴がたくさん潜んでいます。
成功事例の裏には、その何倍もの失敗事例が存在します。
しかし、多くの企業は失敗から学ぶことなく、同じ過ちを繰り返してしまっているのが現状です。
そこで本記事では、よくある失敗事例ワースト5を厳選してご紹介します。
なぜ失敗してしまったのか、その根本的な原因を解き明かし、具体的な対策方法までをセットで解説します。
この記事を読んで、先人たちの失敗から学ぶことで、あなたの会社は無駄な遠回りを避け、最短ルートでSNS内製化を成功させることができるでしょう。
目次
- 失敗事例①: 「とりあえず投稿」で見切り発車してしまう
- 失敗事例②: 担当者が孤独に頑張り、燃え尽きてしまう
- 失敗事例③: フォロワー数だけを追いかけてしまう
- 失敗事例④: 売り込み投稿ばかりで嫌われてしまう
- 失敗事例⑤: 分析・改善をせず、やりっぱなしで終わる
- まとめ: 失敗は成功のもと
失敗事例①: 「とりあえず投稿」で見切り発車してしまう
【状況】「SNSが重要らしい」と、目的やターゲットを明確にしないまま、流行りの投稿を真似したり、日々の出来事を思いつきで投稿したりしてしまうケース。
・アカウントの方向性がブレブレで、何を発信したいのかユーザーに伝わらないい。
・投稿内容に一貫性がないため、専門性が低く見え、信頼されない。
・結果として、フォロワーは増えず、担当者のモチベーションも低下していく。
【原因】 この失敗の根本原因は、戦略の欠如です。
SNS運用を「単なる作業」と捉え、「誰に、何を伝え、どうなってもらいたいのか」という最も重要な目的(KGI/KPI)とターゲット(ペルソナ)の設定を怠ったことが問題です。
【対策】 投稿を始める前に、必ず以下の2点をチームで議論し、言語化しましょう。
1.目的とKPIの再設定: 「SNSを通じて、最終的にどんなビジネス成果を得たいのか?(売上向上、認知度向上、採用など)」を決め、それを測るための数値目標(KPI)を設定します。
2.ペルソナの具体化: 「情報を届けたい理想の顧客はどんな人物か?」を、年齢、職業、趣味、悩みなど、具体的に描き出します。
3.ペルソナが「本当に知りたい情報」は何かを考え抜くことが、コンテンツの質を高めます。
失敗事例②: 担当者が孤独に頑張り、燃え尽きてしまう
【状況】 「SNS担当」に任命された一人の社員が、他の業務と兼任しながら、企画、撮影、デザイン、投稿、分析のすべてを孤独に背負い込んでしまうケース。
・日々の投稿に追われ、戦略を考える時間がない。
・成果が出ない焦りや、周囲の無関心から、精神的に追い詰められてしまう。
・最終的に担当者が疲弊しきってしまい、投稿が完全にストップ。最悪の場合、退職につながることも。
【原因】 SNS運用を「一個人のタスク」と捉え、組織として取り組む体制を構築しなかったことが原因です。
経営層や他部署の理解と協力が得られず、担当者が孤立してしまった結果
【対策】 SNS運用は「チーム戦」です。
担当者を一人にせず、組織としてサポートする体制を築きましょう。
- 経営層のコミットメント: 経営者がSNSの重要性を理解し、「短期的な成果を求めない」「失敗を許容する」というメッセージを明確に発信することが、担当者の心理的な安全性を確保します。
- チーム体制の構築: 企画は営業部のAさん、デザインはデザイナーのBさん、分析はマーケティング部のCさん、といったように、それぞれの得意分野を活かしたチームを作れないか検討しましょう。たとえ週に1時間の協力でも、担当者の負担は大きく軽減されます。
- 業務の標準化と効率化: 誰が担当しても一定のクオリティを保てるように、運用マニュアルを作成したり、CanvaなどのデザインテンプレートやMeta Business Suiteなどの予約投稿ツールを導入したりして、属人化を防ぎ、業務を効率化します。
失敗事例③: フォロワー数だけを追いかけてしまう
【状況】 「フォロワー1万人」といった目標を掲げ、プレゼントキャンペーンを連発したり、相互フォロー企画に参加したりして、とにかくフォロワー数を増やすことだけに注力してしまうケース。
・フォロワーは増えるが、そのほとんどがプレゼント目的の懸賞アカウントや、自社の商品・サービスに全く興味のないユーザーばかり。
・見かけのフォロワー数は多いのに、投稿への「いいね!」やコメントが極端に少ない、エンゲージメントの低いアカウントになる。
・結果として、ウェブサイトへのアクセスや商品の購入には全くつながらず、売上は1円も上がらない。
【原因】 SNS運用の目的(KGI)を見失い、中間指標であるはずのフォロワー数(KPI)そのものが目的化してしまったことが原因です。
「フォロワーが多い=すごい」という幻想に取り憑かれてしまった結果です。
【対策】 フォロワーの「数」ではなく「質」を重視する意識改革が必要です。
- KGIに立ち返る: 「そもそも、何のためにSNSを運用しているんだっけ?」と、本来の目的に立ち返りましょう。ECの売上を上げたいのであれば、見るべき指標はフォロワー数ではなく、「ウェブサイトクリック数」や「保存数」のはずです。
- エンゲージメント率を重視する: フォロワー数に対する「いいね!」「コメント」「保存」の割合(エンゲージメント率)を定期的にチェックしましょう。この数値が高いほど、質の高い(=熱量の高い)フォロワーが集まっている証拠です。
- 安易なキャンペーンに頼らない: プレゼントキャンペーンは、一時的にフォロワーを増やす効果はありますが、ブランドのファンを育てることにはつながりません。それよりも、ユーザーの悩みを解決する有益な情報を着実に発信し続ける方が、時間はかかっても、結果的にビジネスに貢献してくれる「本物のファン」が集まります。
失敗事例④: 売り込み投稿ばかりで嫌われてしまう
【状況】 「SNSで売上を上げたい」という気持ちが先行するあまり、毎回の投稿が自社の商品紹介やサービスの宣伝、キャンペーンの告知ばかりになってしまうケース。
・ユーザーから「広告ばかりでつまらないアカウント」と認識され、フォローを外されてしまう。
・投稿への反応がどんどん薄くなり、アルゴリズム的にも不利になる(投稿が表示されにくくなる)。
・結果として、誰にも見向きもされなくなり、売上向上どころか、ブランドイメージの低下を招いてしまう。
【原因】 ユーザーがSNSを利用する目的を理解せず、企業側の都合だけを押し付けてしまったことが原因です。
ユーザーは広告を見るためにSNSを使っているのではありません。「面白い情報」「役に立つ情報」「共感できる情報」を求めているのです。
【対策】 発想を「Give & Take」から「Give, Give, Give & Take」へと転換しましょう。
徹底的にユーザーに価値を提供し、信頼関係を築いた先に、初めてビジネスチャンスが生まれます。
- 価値提供コンテンツを8割にする: 投稿全体の8割は、ユーザーの悩み解決や知識欲を満たすための「お役立ち情報」に徹しましょう。残りの2割で、自社の商品がその悩みをどう解決できるのかを、事例などを交えて紹介します。(詳細はInstagram内製化の5ステップを参照)
- 「人」を見せる: 商品の機能やスペックを語るのではなく、「どんな想いでこの商品を作ったのか」「開発でどんな苦労があったのか」といったストーリーや、社員の素顔を見せることで、ユーザーは共感し、ファンになってくれます。
失敗事例⑤: 分析・改善をせず、やりっぱなしで終わる
【状況】 日々の投稿を作成し、スケジュール通りにアップすることだけで満足してしまい、その結果を全く振り返らないケース。
・どの投稿がユーザーに響いたのか、なぜ響いたのかが分からないため、成功を再現できない。
・反応の悪い投稿を続けてしまい、アカウントが全く成長しない。
・成果が出ないため、上司から「SNSって、本当に意味あるの?」と詰められ、担当者のモチベーションが低下する。
【原因】 SNS運用におけるPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)の重要性を理解せず、「Do(実行)」だけで止まってしまっていることが原因です。
投稿は、あくまで仮説の検証プロセスにすぎません。
【対策】 分析を「面倒な作業」ではなく、「ユーザーとの対話」「宝探し」と捉え、運用プロセスに組み込みましょう。
- 分析の時間をスケジュールに組み込む: 「毎週金曜日の午前中は分析の時間」というように、強制的に時間を確保します。
- 見るべき指標を絞る: 最初からすべてのデータを見ようとすると挫折します。まずは「保存数」と「プロフィールアクセス数」の2つに絞って、投稿ごとの数値を比較し、その要因を考察するだけでも、大きな発見があります。
- シンプルなレポートを作成する: 週次や月次で、「良かった点」「悪かった点」「次月のアクション」を1枚のシートにまとめるだけでも十分です。これをチームや上司に共有することで、運用の成果が可視化され、協力も得やすくなります。
まとめ: 失敗は成功のもと
今回ご紹介した5つの失敗事例は、多くの企業が陥りがちな典型的なパターンです。
- 失敗①: 戦略なき見切り発車 → 対策: 目的とターゲットを明確に!
- 失敗②: 担当者の孤独な戦い → 対策: チームで支える体制を!
- 失敗③: フォロワー数という幻想 → 対策: 「数」より「質」を重視!
- 失敗④: 嫌われる売り込み投稿 → 対策: Giveの精神を徹底!
- 失敗⑤: やりっぱなしの無反省 → 対策: PDCAサイクルを回せ!
重要なのは、これらの失敗は「避けることができる」ということです。これから内製化を始める方は、これらの事例を反面教師として、正しいスタートを切ってください。既に運用に悩んでいる方は、自社がどのパターンに陥っているかを客観的に分析し、今日から対策を実行してみてください。
失敗は成功のもとです。先人たちの失敗から学び、賢くSNS運用を進めていきましょう。
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お問い合わせ: 株式会社but art 公式サイト
執筆者プロフィール:
株式会社but art 代表取締役社長 山口 裕生
愛媛県主催のSNSセミナー講師も務める。
大手企業~中小企業まで100社以上のSNS内製化支援実績を持つ。

