企業が自社のSNSアカウントで「私たちは素晴らしい会社です!」といくら発信しても、現代の賢い求職者には、なかなか響きません。
情報が溢れる現代において、人々が本当に信頼を寄せるのは、企業の公式発表よりも、利害関係のない「第三者のリアルな声」だからです。
この「第三者の声」を、採用活動に戦略的に取り入れる手法が、インフルエンサーマーケティングです。
特定のコミュニティで強い影響力を持つインフルエンサーを通じて、企業の魅力を語ってもらうことで、自社発信だけでは決して届かなかった層にまで、高い信頼性をもってメッセージを届けることが可能になります。
本記事では、SNS採用の新たな一手として注目されるインフルエンサー活用の具体的な方法から、費用相場、そして最も重要な「インフルエンサーの選び方」までを徹底解説します。
第1章 なぜ、採用活動にインフルエンサーが有効なのか?
採用におけるインフルエンサー活用の3大メリット
1.圧倒的なリーチ力: 自社アカウントのフォロワー数を遥かに超える、大規模な潜在層に一瞬でアプローチできます。
2.高い信頼性の獲得: 候補者は、企業からの直接的なメッセージよりも、自分がフォローしているインフルエンサーの「おすすめ」を信頼する傾向があります。
3.ターゲット層への的確な訴求: 特定の趣味・嗜好や専門分野に特化したインフルエンサーを起用することで、自社が求める人材層にピンポイントでメッセージを届けることができます。
デメリットと注意点
・費用: 当然ながら、起用には費用がかかります。
・炎上リスク: インフルエンサーの過去の言動や、PR投稿の内容(ステルスマーケティングなど)によっては、企業のブランドイメージを損なうリスクがあります。
・ミスマッチ: インフルエンサーの選定を誤ると、全くターゲットではない層に情報が拡散され、効果が得られない可能性があります。
第2章 インフルエンサーの種類と採用における役割
フォロワー数に応じて、インフルエンサーは大きく4つのカテゴリーに分類されます。
採用活動では、必ずしもフォロワー数が多いことが正義ではありません。
| 種類 | フォロワー数 | 特徴 | 採用における役割 |
|---|---|---|---|
| メガインフルエンサー | 100万人〜 | 芸能人・著名人レベル。圧倒的な認知度。 | 大規模な認知獲得。企業のブランドアンバサダーなど。 |
| マクロインフルエンサー | 10万人〜100万人 | 特定ジャンルの有名人。高い影響力。 | 業界内での知名度向上。合同説明会イベントへの登壇など。 |
| マイクロインフルエンサー | 1万人〜10万人 | 特定コミュニティの専門家。ファンとの距離が近い。 | ニッチな専門職採用。エンジニアコミュニティの有名人など。 |
| ナノインフルエンサー | 〜1万人 | 一般人に近い存在。エンゲージメント率が非常に高い。 | リアルな口コミ創出。社員の友人・知人など。 |
採用活動において、最も費用対効果が高いのは「マイクロインフルエンサー」と「ナノインフルエンサー」です。
第3章 採用活動でのインフルエンサー活用法 4選
活用法1: 企業・仕事紹介の投稿依頼(ギフティング/PR投稿)
インフルエンサーに自社の商品やサービスを体験してもらい(ギフティング)、その感想を自身のSNSで投稿してもらう、最も一般的な手法です。
採用においては、「オフィス見学」や「社員との座談会」などを体験してもらい、そのリアルな感想を発信してもらいます。
活用法2: イベントへの参加とレポート
会社説明会やミートアップイベントにインフルエンサーを招待し、参加した感想をライブ配信や投稿でレポートしてもらいます。
イベントの熱気や雰囲気を、臨場感をもって伝えることができます。
活用法3: 社員インタビュー・対談コラボ
自社のエース社員や、特徴的なキャリアを持つ社員と、インフルエンサーの対談企画を実施します。
第三者の視点から質問してもらうことで、社員の魅力や仕事のやりがいを、より客観的かつ深く引き出すことができます。
活用法4: 「社員インフルエンサー」の育成
外部のインフルエンサーを起用するだけでなく、自社の社員をインフルエンサーとして育成するという視点も非常に重要です。
社員が自らの言葉で仕事のやりがいや会社の魅力を発信することは、何よりもリアルで説得力のあるコンテンツとなります。
企業は、社員が情報発信をしやすくなるようなガイドラインの整備や、インセンティブ設計などの支援体制を構築することが求められます。
第4章 失敗しないインフルエンサーの選び方 4つの鉄則
鉄則1: フォロワー数だけで判断しない
フォロワーは買うことができます。重要なのは数ではなく「質」。
コメント欄を見て、熱量の高いファンとの交流が活発に行われているかを確認しましょう。
鉄則2: エンゲージメント率を必ず確認する
エンゲージメント率( (いいね+コメント数) ÷ フォロワー数 )は、そのインフルエンサーが持つ「本当の影響力」を示す指標です。
一般的に、マイクロインフルエンサーはエンゲージメント率が高い傾向にあります。
鉄則3: フォロワーの属性と、自社のターゲットが一致しているか
インフルエンサーのフォロワーの年齢層、性別、興味関心が、自社が採用したい人材像と一致しているかを確認します。
インフルエンサー本人に、フォロワーのデモグラフィックデータを提供してもらうのが確実です。
鉄則4: 世界観が企業文化と合っているか
インフルエンサーが持つ雰囲気や価値観が、自社の企業文化と合っているかは非常に重要です。
過去の投稿を遡って確認し、自社のブランドイメージを損なうような発信をしていないかをチェックしましょう。
第5章 費用相場と契約時の注意点
・費用相場: 一般的に「フォロワー単価1円〜3円」が目安と言われています。(例: フォロワー10万人のインフルエンサーに投稿を1件依頼する場合、10万円〜30万円)
・契約時の注意点: 投稿内容の事前確認、二次利用の可否、競合他社のPR投稿の禁止など、依頼内容は契約書で明確に定めておくことがトラブル防止に繋がります。
・ステマ規制への対応: 2023年10月から施行されたステルスマーケティング規制法により、PR投稿には「#PR」「#プロモーション」などの明記が義務付けられています。必ず遵守しましょう。
まとめ:インフルエンサーは「拡声器」であり、「信頼の証」
インフルエンサーは、企業のメッセージを増幅してくれる「拡声器」であると同時に、そのメッセージに信頼性を与えてくれる「信頼の証」でもあります。
自社の魅力を、自社の言葉だけで語る時代は終わりました。第三者の力を賢く借り、戦略的に活用すること。
それが、採用競争で一歩先を行くための、新たなスタンダードとなるでしょう。
執筆者プロフィール
株式会社but art 代表取締役社長 山口 裕生 愛媛県主催のSNSセミナー講師も務める。
大手企業~中小企業まで100社以上のSNS内製化支援実績を持つ。

