「毎日投稿を続けて、フォロワーも少しずつ増えてきた。
でも、上司に『で、結局、採用にどれだけ貢献しているの?』と聞かれると、言葉に詰まってしまう…」
これは、SNS採用担当者が直面する、最も深刻な悩の一つです。
目的や目標が曖昧なままでは、運用はただの「作業」となり、その成果を社内に説明することも、改善の方向性を見出すこともできません。
この課題を解決し、SNS採用を「なんとなくの活動」から「戦略的な人事施策」へと昇華させる鍵が、KPI(重要業績評価指標)の設定です。
本記事では、SNS採用の成果を正しく測定し、データに基づいてPDCAを回していくための、実践的なKPI設定方法を徹底解説します。
第1章 なぜ、SNS採用にKPI設定が不可欠なのか?
KPIとは?KGIとの違い
・KGI (Key Goal Indicator / 重要目標達成指標): 最終的に達成すべきゴール。採用活動におけるKGIは、多くの場合「採用人数」や「採用コストの削減率」などになります。
・KPI (Key Performance Indicator / 重要業績評価指標): KGIを達成するための中間的な指標。日々の活動が順調に進んでいるかを測るための「チェックポイント」です。
SNS採用において、いきなりKGIである「採用数」だけを追いかけても、日々の活動がどう繋がっているのか分からず、改善の打ちようがありません。
だからこそ、KGI達成までの道のりを分解したKPIを設定することが不可欠なのです。
KPI設定の3つのメリット
1.成果の可視化: 日々の活動の成果を数値で客観的に評価できるようになる。
2.目標の明確化: チーム全体で目指すべき方向性が明確になり、モチベーションが向上する。
3.戦略的な改善: 数値に基づいて課題を発見し、データドリブンな改善アクションを取れるようになる。
第2章【フェーズ別】SNS採用で設定すべきKPI一覧
SNS採用のKPIは、求職者の心理状態に合わせて「認知」「興味・関心」「行動」「応募」の4つのフェーズで設定するのが効果的です。
フェーズ1: 認知段階のKPI
目的: まずは企業やアカウントの存在を知ってもらう
- リーチ数: 投稿が何人のユニークユーザーに届いたか
- インプレッション数: 投稿が表示された合計回数
- フォロワー数: アカウントのファン(潜在的な候補者)の数
- ハッシュタグ経由のリーチ数: 設定したハッシュタグが有効に機能しているか
フェーズ2: 興味・関心段階のKPI
目的: コンテンツを通じて、企業への興味を深めてもらう
- エンゲージメント率:
(いいね+コメント+保存数) ÷ リーチ数。コンテンツの質を測る最重要指標。 - 保存数: 「後でじっくり見たい」と思われた数。採用情報では特に重要。
- シェア数: 他者に推薦したいと思われるほど、有益な情報であったか。
フェーズ3: 行動段階のKPI
目的: より詳細な情報を求めて、次のアクションを促す
- プロフィールへのアクセス数: アカウント本体に興味を持った人の数。
- ウェブサイトクリック数: プロフィール欄のURL(採用サイトなど)がクリックされた数。
- DMでの問い合わせ数: 具体的な質問や相談があった数。
フェーズ4: 応募段階のKPI
目的: 最終的なゴールである応募に繋げる
- 応募数(コンバージョン数): Instagram経由での応募件数。
- 応募率:
応募数 ÷ ウェブサイトクリック数。 - 採用決定数: Instagram経由で採用に至った人数。
第3章 自社に合ったKPIを設定する4つのステップ
STEP1: 採用目標(KGI)の明確化
まず、SNS採用を通じて最終的に何を達成したいのか(KGI)を明確にします。
・例: 「2025年度の新卒採用で、SNS経由の応募を50件獲得し、その中から5名を採用する」
STEP2: KPIツリーの作成
KGIを頂点に置き、それを達成するために必要な要素をKPIとして分解し、ツリー構造で可視化します。
・例: 採用数 5名 ← 応募数 50件 ← ウェブサイトクリック数 500回 ← プロフィールアクセス数 2,500回 ← フォロワー数 5,000人
STEP3: 目標値(ターゲット)の設定
各KPIに、具体的な数値目標を設定します。
過去のデータがない場合は、まず業界の平均的な数値を参考にし、3ヶ月後に見直すなど、段階的に設定するのが現実的です。
・業界平均の目安: エンゲージメント率 1-3%、ウェブサイトクリック率 10-20%(プロフィールアクセス数に対して)
STEP4: 測定方法の決定
各KPIを、どのツールで、どのタイミングで測定するかを決めます。
・Instagramインサイト: リーチ、エンゲージメント、プロフィールアクセスなど
・Google Analytics 4 (GA4): ウェブサイトクリック数、応募数(コンバージョン設定が必要)
第4章 KPIレポートの作り方と改善アクション
月次レポートの基本フォーマット
Googleスプレッドシートなどで、以下の項目を含むレポートを作成し、毎月定点観測しましょう。
- サマリー: 目標達成状況、全体所感
- KPI実績: 各KPIの目標値と実績、達成率を一覧表示
- ハイライト: パフォーマンスが良かった投稿とその要因分析
- 課題と考察: データから見えた課題
- 次月のアクションプラン: 課題解決のための具体的な行動計画
KPIに基づいた改善アクションの例
・課題: リーチ数は多いが、エンゲージメント率が低い
・仮説: 投稿がユーザーの興味を引けていないのでは?
・アクション: 投稿内容を「企業からのお知らせ」中心から、「社員のリアルな声」や「役立つノウハウ」中心に変更してみる。
まとめ:KPIは、SNS採用という航海を導く「海図」である
KPIを設定せずにSNSを運用するのは、海図を持たずに航海に出るのと同じです。
どこに向かっているのか分からず、嵐(成果の低迷)が来ても、なぜそうなったのか、次に何をすべきか判断できません。
KPIという海図を手に入れることで、初めて自分たちの現在地を知り、目的地(採用成功)まで最短ルートで進むことができます。
本記事を参考に、データに基づいた戦略的なSNS採用を、今日から始めてみましょう。
執筆者プロフィール
株式会社but art 代表取締役社長 山口 裕生 愛媛県主催のSNSセミナー講師も務める。
大手企業~中小企業まで100社以上のSNS内製化支援実績を持つ。

